土壌サンプル採取日
2024年10月30日
土壌診断 項目
1.全炭素量(C)、全窒素量(N)、C/N比
2.菌根菌胞子数
3.一般生菌数、大腸菌群数、大腸菌数
土壌診断 レポート
考察
サイト1 植栽土壌基盤
■炭素量:19.2g/Kg土、窒素量:14.8g/Kg土であり、森林土壌のB、C層にほぼ相当する量の炭素、窒素を含んでいます(*1*2)。一般生菌数(生きた細菌数)は190万個で、森林土壌の細菌数:10の6乗~10の8乗個(培養法による)(*1*4)の範囲内にありました。したがって、木本や草本の植栽に適した基材であると判断いたします。
サイト2、3 エスペックの森南側:A0層、および、基盤層(A0層の下層)
■A0層の炭素量(187.4g/Kg土:主にH層・A層を反映)は、基盤層の値(27.0g/Kg土)の約7倍でした。このことは、植栽後約20年にわたるリターフォール(葉、枝、樹皮など)を通して、新たな表土が形成されつつあることを如実に物語っています。これから数十年をかけて、さらにH層が増大し、より腐植の進んだA層が成長し、基盤層をB層とする新たな地層が形成されることでしょう。
■ちなみにA0層の炭素量・窒素量は、東京農工大学が群馬県の落葉広葉樹林・針葉樹林で実施した調査で得られた腐植層の炭素量・窒素量とほぼ対応しており(*3)、リターフォールにより形成される腐植層の標準的な値であると推察されます。
■土1g中の一般生菌数(生きた細菌数)は、A0層で2600万個、基盤層で1200万個でした。これらの値は、これまで報告されている森林土壌の細菌数:10の6乗~10の8乗個(培養法による)(*1*4)の範囲にあり、このサイトで自然林に近い土壌細菌叢が形成されつつあることを示唆しています。
■A0層中のアーバスキュラー菌根菌(AMF)の胞子数は少なく、根との共生率も低い結果でした。また、外生菌根菌(ECM)の共生も確認されませんでした。要因として、①過去の土地利用を通して基盤層中の菌根菌が失われたこと、②植栽樹木の苗床に菌根菌が存在しなかったこと、が考えられます。近年、森林形成には地下の菌根菌ネットワークが不可欠と考えれていますので(*5)、関心があれば改善検討をお勧めします。
サイト4、5 エスペックの森西側常緑:A0層、および、基盤層(A0層の下層)
■A0層の炭素量(166.2g/Kg土:主にH層・A層を反映)は、基盤層の値(21.5g/Kg土)の約7倍でした。このことは、植栽後約20年にわたるリターフォール(葉、枝、樹皮など)を通して、新たな表土が形成されつつあることを如実に物語っています。これから数十年をかけて、さらにH層が増大し、より腐植の進んだA層が成長し、基盤層をB層とする新たな地層が形成されることでしょう。
■土1g中の一般生菌数(生きた細菌数)は、A0層で6000万個、基盤層で420万個でした。これらの値は、これまで報告されている森林土壌の細菌数:10の6乗~10の8乗個(培養法による)(*1*4)の範囲にあり、このサイトで自然林に近い細菌叢が形成されつつあることを示唆しています。
*1 天然林土壌における培養法および直接検鏡法による微生物数量(https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030720633.pdf)
*2 森林土壌の土壌型と化学的性質との関係について(https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/soiltype/information/fsr/Report_8_83_126.pdf)
*3 分解程度の異なる樹種別リターの炭素および窒素無機化特性(https://www.jstage.jst.go.jp/article/dojo/73/4/73_KJ00000888742/_pdf/-char/ja)に記載のHA区分、および、A(0-5)区分の炭素量、窒素量、C/N比にほぼ対応する。
*4 森林土壌の細菌群土壌型および植生との関連について(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssm/18/0/18_KJ00008102763/_pdf/-char/ja)
*5 地下の菌類のネットワークが森林の安定性と変化の原動力であることを解明(https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/embed/jaresearchresearch_results2018documents181120_101.pdf)
サイト間比較 エスペックの森:南側と西側常緑
■炭素量、窒素量、一般生菌数の数値の差異に大きな意味は無いと考えます。最も大きな違いは、A0層の厚みでした(南側約3cm、西側常緑1~2cm)。要因として、リターフォール量の違い(樹種、植栽密度、樹高等の影響)、および、微生物活性度の違い(地温などの影響)が考えられるでしょう。


写真左)エスペックの森 南側
写真右)エスペックの森 西側常緑

画像)エスペックバンビの里MAP(出典元:エスペック「生物多様性保全に向けた取り組み」)
土壌診断結果を受けて(土田さん、吉野さんコメント)
エスペックバンビの里にある「エスペックの森」の南側と西側の常緑樹エリアと、エスペックミックが提供する植栽土壌基盤の分析を行いました。エスペックの森は、1999年から2007年にかけて計5回、在来種の苗木を植樹して育てた森です。南側は植樹してから25年、西側は23年ほど経過したタイミングでの土壌診断となりました。
南側は植栽当時、有機物の少ない山砂ベースの植栽土壌基盤を用いていました。現在は表層が3㎝発達し、全炭素量も土1kgあたり187.4gあることがわかりました。現在エスペックミックが提供する植栽土壌基盤と、当時の植栽土壌基盤は異なるためあくまで参考ですが、エスペックミックの植栽土壌基盤は全炭素量は1kgあたり27.0gです。25年間かけて、エスペックの森の土壌が豊かに育ったことを示していると受け止めています。
また菌根菌は不在でしたが、人工的な土壌でだったために、もともと不在であったのかもしれません。実は植樹をしてから、問題なく育った苗木と、途中で枯れてしまった苗木があったのですが、前者は菌根菌との共生がなくても比較的育つ樹種で、後者は共生が必要であった樹種であったという可能性も考えられると思います。
大変おもしろい分析をしていただいたので、この結果をまとめて対外的に発信することも検討したいと思います。