土壌サンプル採取日
2025年3月22日
土壌診断 項目
菌根共生率、菌根菌胞子数
土壌診断証明書


土壌診断レポート
考察
ノーマル
■エンバク、ネギともに菌根菌との強力な共生関係を作っています(菌根共生率が高い)。堆肥量を抑えた有機農法であり、土壌中の養分量が多すぎないないため、作物が菌根菌との共生を選んでいる状況と推測されます。
■このレベルの菌根共生率を実現している圃場は多くありませんので、今後も維持することを願います。
■一方、菌根共生率が高いにも関らず土壌中の菌根菌胞子数は少ないという結果でした。この要因はかつての水稲栽培期間の農薬使用の影響が大きいと推察いたします。
■作物と菌根菌との共生をより確かなものとするために、土壌中の菌根菌生息数を増やすことをお勧めします。
■日本土壌インベントリーでは、このエリアの土壌は未風化の土砂が堆積した「未熟低地土」に分類されます。この土壌は一般的に有機物量は多くありませんが、排水が良いため主に畑に利用されています。
■ノーマル圃場のサンプル土壌はやや水分が多い印象でした。かつて行われていた水稲栽培の鋤床層(すきどこそう)の影響が残り、排水が妨げられている可能性があります。
■排水性が悪いと土壌バクテリアの働きを弱めますので、鋤床層を何らかの方法で攪乱するなど本来の排水性を取り戻すことで、微生物をより活用した作物栽培が可能になると思われます。
■参考資料としていただいた「土壌カルテ(化学分析)」を見ると、塩基類がやや少ないものの、土壌の窒素供給ポテンシャルを示す「可給態窒素」や土壌有機物量の指標となる「腐植」は適性範囲にあると判断いたします。
■以上を踏まえ、ノーマル圃場の最大の特徴は、菌根菌をしっかりと活用した栽培が出来るポテンシャルがあること、課題は排水性の改善にあると考えます。
ハッピーゾーン
■バラつきはありますが、いずれの作物も菌根菌との良好な共生関係を作っています。堆肥量を抑えた有機農法であり、土壌中の養分量が多すぎないないため、作物が菌根菌との共生を選んでいる状況と推測されます。
■このレベルの菌根共生率を実現している圃場は多くありませんので、今後も維持することを願います。
■一方、菌根共生率が高いにも関らず土壌中の菌根菌胞子数は少ないという結果でした。この要因は過去の畑作での農薬使用の影響が残っていると推察いたします。
■作物と菌根菌との共生をより確かなものとするために、土壌中の菌根菌生息数を増やすことをお勧めします。
■日本土壌インベントリーでは、このエリアの土壌は未風化の土砂が堆積した「未熟低地土」に分類されます。この土壌は一般的に有機物量は多くありませんが、排水が良いため主に畑に利用されています。
■ハッピーゾーン圃場のサンプル土壌は適度な水分を含み、団粒構造がよく形成されている印象でした。葛の管理が大変とのお話でしたので、遊休農地期間の雑草繁茂により、多くの有機物が土壌へ供給されてきた結果であると推察いたします。
■参考資料としていただいた「土壌カルテ(化学分析)」を参照すると、「腐植」、「可給態窒素」が多いことから、この圃場では土壌バクテリア叢も活発に働いていることが推察されます。
■以上を踏まえ、ハッピーゾーンは、菌根菌をしっかりと活用した栽培が出来るポテンシャルがあり、腐植と可給態窒素が多く存在する「地力」の高い圃場であると判断します。


写真)土壌サンプル採取時の圃場 左:ノーマル、右:ハッピーゾーン(2025年3月22日)
土壌診断結果を受けて(菊池さんコメント)
1年ほど前に化学分析を依頼したのですが、結果はノーマルとハッピーゾーンであまり差がありませんでした。私たちの体感では、農作物の生育や水はけ等で大きな違いを感じていたので、腑に落ちないところがありました。

今回、ノーマルのみで全炭素量と菌根菌を調べるか、ノーマルとハッピーゾーンで菌根菌を調べるか迷いましたが、環境再生、不耕起をめざすということは土壌の生態系を活用した農になるというアドバイスを受けて、後者の選択をしました。
ノーマル、ハッピーゾーンのいずれも菌根共生率が高い結果で、私たちのこれまでの取り組みが間違っていなかったと証明されて、ポジティブに受け止めています。

また、これまでの地歴からノーマル圃場の水はけは鋤床層が関係している可能性がわかりました。鋤床層を攪乱するには、耕すこともひとつの方法だと思いますが、せっかく菌根共生率が高いことがわかったので、耕すことで微生物のネットワークが破壊されないような方法、例えば植物の力を借りることも検討したいと思います。ちょうど緑肥として草丈のあるセスバニアの種を購入したので、根を活用できることを期待しています。また水はけの悪い場所も、マコモダケを植えてみるなど、相性のよい作物を探してみます。
菌根菌の資材は興味がありますが、地域の自然の中にも菌根菌がいるということで、コミュニティの中で土壌菌のシェアも相談してみたいですね。

写真)農園つづくご提供