土壌サンプル採取日
2024年8月15日
土壌診断 項目
1.全炭素量(C)、全窒素量(N)、C/N比
2.菌根共生率、菌根菌胞子数
3.一般生菌数、大腸菌群数、大腸菌数
土壌診断 証明書
土壌診断 レポート
考察
■この圃場の土は「細粒質還元型グライ低地土」に分類され、表層から50cm以内にグライ層(地下水や停滞水により酸素が少ない状況にある層)が出てくる土壌です。このタイプの土壌は主に水田として利用されますが、畑地として利用する場合には、強く固まった土の粉砕や耕作が難しいという問題や、酸素欠乏により作物の根の成長に支障が出るという問題を解決するために、土中に暗渠(あんきょ)を設置するなどして水はけ改善対策を行うのが一般的です。
■一方で、このタイプの土では、水が地下へ浸透しにくいため、養分の流出が抑えられ、自然肥沃度が高くなるというメリットも有ります。したがって、上記の問題解決を行いつつ、このメリットを活用できれば、より生産性の高い自然栽培圃場になる可能性があります。
■土壌の全炭素量は地質標準値(農研機構「土壌のCO2吸収「見える化」サイト」記載値)より12%ほど少ない値でした。この要因は、①長年続いた慣行水稲栽培により土壌中の腐植成分が失われたこと、②その後の耕作放棄と自然栽培を通して一定量の雑草や作物残渣が土中に戻されたものの、酸素が少ない環境(上述)では分解されにくいため、腐植生成が十分に進んでいないためであると考えられます。
■一般生菌数は土1gに3,600万個で、多くの土壌細菌が生息しています。ほとんどが酸素が少ない環境で生息する嫌気性細菌であると推測されますが、畑地に穴を設けるなどして通気性を改善できれば、酸素を好む好気性細菌も増え、細菌群の多様性が改善されることにより、分解されずに残っている有機物の分解が効率的に進むことが考えられます。それにより、腐植生成が進行し(炭素量の増加)、土壌肥沃度の向上も期待できます。
■菌根菌(AM菌)は、少ないながらも生息し、サトイモ根との共生が確認されました。ただし絶対数が少ないため、過去の慣行栽培での農薬使用が影響があると思われます。菌根菌は化成肥料や有機堆肥を投入しない自然栽培では、リンの供給などを担う重要な土壌微生物ですので、現在の生息を維持しつつ、さらに増やすアプロ―チが大切です。
■この圃場の第一課題は、水はけをよくすること、および、空気を供給することで土壌の酸素不足を解消し、好気性細菌を含む土壌細菌叢の働きを活性化させる事です。それにより、腐植が蓄積し、徐々にではありますが土の硬さが解消され、耕作しやすく、作物にとっても根を伸ばしやすい土質へと改善されると思われます。
土壌診断結果を受けて(風間さんコメント)
土壌診断をした圃場は、水田として使われたあと、長らく耕作放棄されていました。
土が非常に固かったため、高畝を作って耕作を始め、1~2年経過して最初よりは土が柔らかくなってきました。栽培に適さない作物もありますが、サツマイモ、サトイモは相性がいいように感じます。
これまで何となく肌で感じていたことが、土壌診断を通して理解できました。改善策を検討しながら、これから土壌改善が進むことを期待しています
写真)土壌サンプル採取時の自然農サトイモ圃場(2024年8月15日)