中里さんインタビュー

みんな大地の髙橋です。私が中里さんを知ったのは2022年11月。同僚がSNSで紹介していた動画がきっかけでした。さっそく注文した季節の野菜セットは、箱を開けると野菜のエネルギーがわーっと伝わってきて、シンプルな調理で驚くほど美味しくいただくことができました。それ以降、顔の見える生産者の方から野菜を購入することが、(毎回とはいきませんが)丁寧に食事をする大切な機会につながっています。今回、私が中里さんのお野菜のファンであることから、土壌診断やインタビューをお願いいたしました。


髙橋(みんな大地)
はじめに中里自然農園のご紹介をお願いします。お二人のこと、どんな農園で何を大切に取り組まれているかを教えてください。

中里さん
高知市内から西へ約1時間、海沿いの町「中土佐町」に圃場があります。広さはトータルで約1ha。農園長の祖母宅があるこの地で約10年前、独学で農業をスタートさせました。当初から農薬や化学肥料を使わず、今では年間約50−60種類の野菜を栽培しており、ハウス栽培ではなく、旬を大切にした露地栽培です。

畑の前には真っ青な太平洋と広い空、後ろには緑深い山々が広がります。ときに猛威を振るう自然ですが、土や水、風や太陽、そこに住む小さな虫たちも、そのどれが欠けても農業は成り立ちません。私たちの仕事は野菜ではなく「土」を育てること。育てるというよりは、土と共に生きていく、大地を見守るという感覚です。自然にお邪魔をさせてもらい種をまき、そして季節ごとに収穫できたものを皆さんと一緒に楽しむ、そんな毎日です。

畑では高知といえばの「カツオ」のアラを発酵させ堆肥を作っています。身近にある海の資源を有効に活用し畑へ還元、山水が畑へ染み込み、最終的にはまた海へ。できた野菜たちは私たちの生きる源に。小さな、でもごくごく自然な心地よい循環です。

私たちにとって「農業」は仕事というより「暮らし」に近いものです。鶏を飼い、薪を割り、原木でしいたけを育て、魚を釣りにいき、畑の前の海から海水をくんできて塩を作る。(つい先日ヤギを飼いはじめました!)食べたい野菜があるからそれを作る。収穫の喜びを皆さんにもお届けしたい!そしてお届けしたその先の食卓を想像することは、とても幸せです。

そんなシンプルな喜びを大切に、ぶれない強さをもって自然と共に生きていく、人とも自然とも、気持ちがスッと通うような豊かな日々になるよう願っています。

髙橋
中里さんから届くお野菜は、みんな元気でとても美味しいので、土壌や農についての苦労をなかなか想像できませんでした。以前、土の中のミミズや、土壌の性質についてお伺いしましたが、ご苦労なさっていることも教えていただけますか。

中里さん
圃場は元々水田で基盤整備をされているところが多く、水はけには苦労しており、わざわざ牧草の種をまき根っこの作用によって水はけを少しでも改善するなど試行錯誤しています。それに加え、ここ数年温暖化の影響だと思いますが、雨の「降る・降らない」の差が極端になったように感じています。2022年には土砂が一部畑へ流れ込むなど大雨に見舞われました。自然と共にある農業、まぁ仕方ない、と思うことがほとんどなのですが、環境の変化をひしひしと感じています。

先に述べたように私たちの「農」は「暮らし」に近いものです。「暮らし」は日々楽しいのですが、それでも「農業」という生業になると日々悩みや葛藤もたくさんあります。思い描くビジョンと、それが本当にいいのかどうかという不安、目の前にあるたくさんのやるべきこと…それでもブレることなく信念をもって突き進んでいきたいという思いです。

髙橋
最近気になっていることや、これから取り組んでいきたいこと、これを読んでいる方へのメッセージをお願いします。

中里さん
中里家で最近のトピックスといえば、ヤギ!笑。生後2ヶ月の子ヤギの里親になりましたが、朝から晩まで可愛いすぎて仕事になりません(ちょっと大袈裟ですが)。彼女たちの動きや表情に釘付けです。

そんな中里家ですが、野菜作りはこれまで通り日々コツコツと進めていきたいと思っています。考えすぎずシンプルに。でも努力と勉強は忘れずに。暮らしを存分に楽しみながら!

気になっていることといえば、昨今「食べる」ことと「生産すること」に少し距離があるように感じています。当たり前に目の前に並ぶ食べ物、それがどのようにそこまでやってきたのか…..田舎の「暮らし」ではその距離がとても近く、美味しさと安心、そして幸せに繋がっていると実感しています。
ここ数年農園に興味をもってメッセージをくれたり実際に訪ねてきてくれる方も多くなりました。先生でもないので教えることは何もないのですが、ここでの「暮らし」が普段とはちょっと違う何かを感じたり考えてくれたりする場所になったら良いなぁと願っています。


中里さん、おふたりの暮らしが垣間見えるお話と写真をありがとうございました。もっと知りたいという方は、ぜひ中里さんのInstagramをのぞいてみてください。

中里さんのお野菜を楽しめるお店(一部ご紹介)

・kitchen and CURRY https://www.andcurry.com/
・LOCALE https://www.locale.tokyo/
・自然イタリア料理 da zero https://www.instagram.com/restaurant_da_zero/
・Indian canteen AMI https://www.instagram.com/amicurry/
・Neki https://www.instagram.com/neki_tokyo/
・songbook https://www.instagram.com/songbook_daita/
・富ヶ谷商店 https://www.instagram.com/tomigaya_shouten/
・Lilly & Qcumber https://www.instagram.com/lilly_and_qcumber/
・KOSA https://www.kosakyoto.com/

※全てのお店が常に中里さんのお野菜を使用しているということではないので、ぜひお店の方とのコミュニケーションやSNSチェックからお楽しみください!

インタビュー:髙橋智里(株式会社UPDATER ビジネスSX部)

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